第40回ヨコハマ映画祭
お待たせしました! ハマの冬の風物詩、ヨコハマ映画祭の季節がやってきました。映画ファンのみなさまに愛され続け、ついに記念の40回目の開催となります。 |
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▲寝ても覚めても ▲鈴木家の嘘 ▲孤狼の血 |
「寝ても覚めても」(119分) | ||
未来に起こることなんて誰にも分らない。私(唐田えりか)は同じ顔同じ容姿の二人の男と、別の場所で恋に落ちた(東出昌大の二役=大阪の麦と東京の亮平)。私の心にウソはない、これは確かに恋なのだ。悔いを残したとしても、今の私の心が私の生き方を求めている…。前作「ハッピーアワー」でも示された高い人間洞察力、内なる情動の不確かさを描き切る、純度の高い表現は、若き巨匠・濱口竜介監督ならではのものだ。3.11東日本大震災を遠景に、その時日本が失った大切な何かを隠喩として、映画の感情線は深く激しく観客の胸をうつ。傑作脚本に呼応してワークショップのエチュードに臨んだ若手俳優陣のセッションもまた素晴らしい。信じられないほどの移動、画角の確かさ、画調の艶をみせる撮影の魔術にも酔いしれたい。成瀬巳喜男監督の得意とした男女の心の綾を語る語り口に比肩しても余りある、「寝ても覚めても」は日本映画史上の大偉業である。 |
(作品賞、監督賞、撮影賞、主演男優賞、助演女優賞、最優秀新人賞) |
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「鈴木家の嘘」(133分) | |
驚異の完成度を示す作品を携えて大型新人監督が登場した。野尻克己、44歳。まず手柄は、ユーモアを緻密な構成に乗せて描き出した脚本の面白さ。登場人物の性格の彫りが深いのも、これまでの現場経験、人とのつながりを重視してきた生き様によるのだろう。実体験に基づくオリジナルだという。――鈴木夫妻(岸部一徳・原日出子)にある日突然不幸な事件が起こる。あまりのショックに記憶を失った母のため、父とひとり娘(木竜麻生)、母の弟(大森南朋)は咄嗟にウソをつく。そのウソを巡っての右往左往と哀しみの癒しが、絶妙なさじ加減で配置されドラマに厚みが増す。名優陣を取りそろえたキャストの中で、とりわけ光彩を放つ木竜麻生の瑞々しさに息をのむ。彼女がキャンパス生活の日常で演じている新体操リボンの実演の向こう側に、死んだ兄(加瀬亮)への追慕と苦い悔悟の思いがにじむ。悲嘆にくれる鈴木家に再生の光明は訪れるか。本作を見逃すな! |
(ベストテン第9位、森田芳光メモリアル新人監督賞、最優秀新人賞) |
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「孤狼の血」(126分) | |
近年これほど血を騒がせる“男ぶり”の映画があっただろうか。役所広司と松坂桃李によるバディムービーにして、白石和彌監督による「仁義なき戦い」への挑戦状として高い表現水準を達成している。「警察じゃけぃ、何をしてもええんじゃ」の名惹句とともに、抗争に明け暮れる巨大暴力組織VS弱小暴力団VS広島県警の図式を濃密なドラマツルギーの中に展開する。狂犬たちの雄叫びを向こうに回し、度を過ぎた取り調べや組織に内通しての裏取引さえ辞さない大上刑事(役所広司の快演)の活躍が胸をすく。広大出身のエリート刑事(松坂桃李)の時に無様な、青臭い正義感にも胸衝かれ、いつしかふたつの“孤狼”の魂が共鳴するのを発見することとなる。昭和の時代の人間臭いやくざに仮装した豪華オールスターたちを意のままに使いこなす白石和彌の監督術は、ついに平成最後の映画界で頂点を極めた。走れ、狼たちの疾走に負けない速さで。 |
(ベストテン第2位、主演男優賞、助演男優賞) |
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