第39回ヨコハマ映画祭
お待たせしました! ハマの冬の風物詩、ヨコハマ映画祭の季節がやってきました。映画ファンのみなさまに愛され続け39回目の開催となります。 お祭りの会場は神奈川県立音楽堂に移動していますのでおまちがえのないように。千人超の映画ファンによる熱気あふれる映画祭を今回もお楽しみいただきます。 さあ、1月28日は、映画ファンのための“映画の日”。映画ファンなら全員が神奈川県立音楽堂に集合せよ! |
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▲彼女がその名を知らない鳥たち ▲幼な子われらに生まれ ▲映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ |
「彼女がその名を知らない鳥たち」(123分) | ||
白石和彌監督作品はこれまでどれもダークな要素満載で、しかし後口の爽やかさと腑に落ちる演出の冴えがずば抜けていた。本作も冒頭から、信じられない露悪さで演ずる蒼井優のクレーム電話から始め、観客のハートをあっさりとミステリアス世界に引き込み快調にスパートする。そしてペースは落ちない。落ちるどころか、蒼井優と阿部サダヲの不可思議な同居生活や、蒼井優と竹野内豊のただれた狂おしい恋愛譚など、めくるめく男女の欲望を交錯させ、観客の思いを画面に釘付けする。中で最も衝撃なのは、松坂桃李の演ずるケチな現実主義者とクレーマー蒼井優が恋に落ちる瞬間のリアルさ説得力の凄みにある。これまでの作品群を超克して、人間の本質に迫る白石和彌渾身の一作を目撃せよ。 名もない鳥たちの飛翔に涙せよ。 |
(監督賞、主演女優賞、助演男優賞)
監督=白石和彌 原作=沼田まほかる 脚本=浅野妙子 撮影=灰原隆裕 美術=今村力 出演=蒼井優、阿部サダヲ、松坂桃李、村川絵梨、赤堀雅秋、竹野内豊 |
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「幼な子われらに生まれ」(127分) | |
現実が映画を模倣する。重松清二十数年前の同名原作を得て、脚本・荒井晴彦の筆が冴えわたる。これは過去のある時期に、未来の忌むべき家族関係として予言され現実となった日本の今のリアルなのだ。血のつながらない家族、血のつながった他人。転籍を告げられたエリートサラリーマン(浅野忠信)には、新しい命を宿した妻(田中麗奈)と妻の前夫(宮藤官九郎)の娘ふたりがいる。「このウチ嫌だ。本当のパパにあわせてよ」。痛烈に放たれた娘の一言に、仕事どころではない。目下の悩みは、思春期の娘、生まれてくる命、この家族の幸せをどう繋いでいくかだ。冷静平静を装うパパの内面での葛藤と突きつけられる現実の難題にどう処するか? 浅野忠信の抑制された感情表現、田中麗奈の妻として女としての本音がぶつかり合い、軋む音がする。不思議な都市空間の撮影と家族の関係をドキュメントするかの演出による、監督・三島有紀子に刮目すべし。 |
(ベストテン第2位) 監督=三島有紀子 原作=重松清 脚本=荒井晴彦 音楽=田中拓人 撮影=大塚亮 出演=浅野忠信、田中麗奈、南沙良、鎌田らい樹、新井美羽、宮藤官九郎、寺島しのぶ |
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「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」(108分) | |
慎二(池松壮亮)と美香(石橋静河)は、美香が夜バイトするガールズバーでふと出会う。意識することもなくただ擦違っただけの二人が1000万分の1の確率で再び出会う東京の夜の街。二人を照らす青白い月。「嫌な予感がするよ」「わかる」。そして二人は出会いと別れを都会の喧騒と孤独の中で繰り返す。二人を取り巻く人物の設定・設計が見事である。慎二とともに日雇いの建設工事現場に働く同僚たちの生活背景が東京の今を浮き彫りする。窒息しそうな都会生活の細部にまで触れるその演出の妙。さらには、最果タヒの原作詩集にイマジネーション豊かな脚色を施し、夜空―というキーワードをもとにナイトシーンを美しく撮り上げた本作は、石井裕也監督の最高傑作にして恋愛映画の最高峰。新星・石橋静河のナチュラルな佇まい、演技の呼吸に、今や若手ナンバーワン俳優といってよい池松壮亮が絶妙に呼応する演技セッションに酔いしれたい。 |
(作品賞、脚本賞、撮影賞、主演男優賞、最優秀新人賞) 監督・脚本=石井裕也 原作=最果タヒ 撮影=鎌苅洋一 照明=宮尾康史 音楽=渡邊崇 出演=石橋静河、池松壮亮、松田龍平、市川実日子、田中哲司、佐藤玲、三浦貴大、ポール・マグサリン、野嵜好美 |
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