第38回ヨコハマ映画祭

 上映作品紹介

お待たせしました! ハマの冬の風物詩、ヨコハマ映画祭の季節がやってきました。映画ファンのみなさまに愛され続け38回目の開催となります。

お祭りの会場はいつもの横浜・関内ホールです。1100人の映画ファンによる熱気あふれる映画祭を今回もお楽しみいただきます。

2016年に最高のきらめきで輝く映画人を称える個人賞表彰式をメインに、ベストテン上位3作品から、ベストテン3位・森田芳光メモリアル新人監督賞・撮影賞・主演男優賞・助演男優賞・最優秀新人賞(W受賞)の6冠に輝く「ディストラクション・ベイビーズ」、ベストテン2位・監督賞・脚本賞・助演女優賞と3冠獲得の「湯を沸かすほどの熱い愛」、ベストテン1位=作品賞・審査員特別賞2冠に輝く「この世界の片隅に」、3作品を上映しちゃう超豪華プログラム。

さあ、2月5日は、映画ファンのための“映画の日”。映画ファンなら全員が、関内ホールに集合せよ!

    ▲ディストラクション・ベイビーズ      ▲湯を沸かすほどの熱い愛            この世界の片隅に
「ディストラクション・ベイビーズ」(108分)


ひんやりとしたブルートーンの画面。生々しい移動撮影が対象に迫る。新鋭・真利子哲也のダイナミックな演出に佐々木靖之のキャメラが見事にシンクロする。日本映画に初めて現れた真正のフィルム・ノワールに拳を握りしめた。青春の鬱屈を描いて比類ない傑作の誕生だ! 誰彼かまわず行きずり相手にストリートファイトを挑んでいく泰良(柳楽優弥)。そこに確固とした理由はない。意識を失うまで殴り合い傷を負う。魂の叫びが痛く刺さる。連戦連勝の泰良に寄生し、虎の威を借る狐として立ち回る裕也(菅田将暉)。そして事態はとんでもない方向へと迷い込む。泰良の弟・将太(村上虹郎)や街を彷徨うキャバクラ嬢・那奈(小松菜奈)も心の隙間を埋めきれない寂しさの虜である。青春の彷徨と咆哮を見事に演じきった若手俳優たちに最高の栄誉を!!


(森田芳光メモリアル新人監督賞、撮影賞、主演男優賞、助演男優賞、最優秀新人賞(W受賞)

監督・脚本=真利子哲也 脚本=喜安浩平 撮影=佐々木靖之 音楽=向井秀徳


出演=柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎、北村匠海、池松壮亮、三浦誠己、でんでん
     
「湯を沸かすほどの熱い愛」(125分)


銭湯「幸の湯」を開店休業中の幸野家にあって双葉(宮沢りえ)の存在は熱い。娘・安澄(杉咲花)が学校でいじめに遭っても、問題の根っこを自ら解決するよう促し、学校を休ませない。それというのも、双葉の余命は2カ月と宣告を受けているから。「断捨離」などと格好をつけている場合ではない。一年前に家出した夫(オダギリジョー)を探し出し、銭湯の営業再開と家族の再会をなんとしても果たしたい。その熱さは、幸野家ばかりか周囲のあらゆる人々を巻き込んで、さらには観客の心までも巻き込んで燃え立たせる。役者陣のアンサンブルがすばらしい。中でも杉咲花の母には涙を見せまいとする泣きの演技は圧巻である。すべては中野量太のオリジナル脚本が着火点で、これは「ひとり」チーム黒澤(小國英雄+橋本忍+黒澤明)とでも呼ぶべき緻密な構成力からなる大傑作である。映画ファンならこの作品でひとっ風呂浴びてみようじゃないか。


(監督賞、脚本賞、助演女優賞)

監督・脚本=中野量太 撮影=池内義浩 音楽=渡邊崇 主題歌=きのこ帝国「愛のゆくえ」

出演=宮沢りえ、杉咲花、オダギリジョー、松坂桃李、篠原ゆき子、伊東蒼、駿河太郎
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「この世界の片隅に」(126分)


太平洋戦争末期の広島、戦火の影はあるものの穏やかな市井の暮らしぶりが淡々と描かれる。絵を描くことが好きなヒロインすず(のん)の、恋や悩みや前向きな生きる希望がそこにはある。家族の日常、親類縁者との行き来にすずは人を疑うこともない。この安穏な日常が、すずの結婚、嫁ぎ先の呉の町で生起する不穏な日常に一転することで、これまで見たこともない戦争映画として観客の心を打つ。これはただ事ではない。“まんが日本昔ばなし”や戦時下の“暮らしの手帖”を思わせるトーンが、呉の湾内を襲撃する米軍機の無差別爆撃のシーンでは恐るべき臨場感で迫る。ものすごい轟音の音響効果が炸裂する。誰もが気づいていながら見つめようとしない人間の心の闇(好戦志向)を粉砕する。これは日本の発明品といってよい反戦映画の金字塔である。


(作品賞、審査員特別賞)


監督・脚本=片渕須直 原作=こうの史代 企画=丸山正雄 画面構成=浦谷千恵 
作画監督=松原秀典 美術監督=林孝輔 音楽=コトリンゴ

声の出演=のん、細谷佳正、尾身美詞、稲葉菜月、牛山茂、新谷真弓、小野大輔、岩井七世、 潘めぐみ、小山剛志、津田真澄、瀬田ひろ美、たちばなことね、世弥きくよ、澁谷天外

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LAST UPDATE 2016/12/03