第37回ヨコハマ映画祭
お待たせしました! ハマの冬の風物詩、ヨコハマ映画祭の季節がやってきました。映画ファンの皆様に愛され、ついに37回目の開催となります。
前回は諸事情で神奈川県立音楽堂での開催でしたが、今回は本来の横浜・関内ホールから
2015年に最高の輝きを放った映画人を称える個人賞表彰式をメインに、作品賞・監督賞・撮影賞・主演女優賞・最優秀新人賞の5冠受賞の「海街diary」、ベストテン6位・主演男優賞・特別大賞の2冠獲得の「あん」、ベストテン9位・脚本賞・主演男優賞・助演男優賞・助演女優賞の4冠に輝く「お盆の弟」の3作品を上映しちゃう超豪華プログラム。
さあ、2月7日は、ぼくらの“映画の日”。映画ファンはみんな、関内ホールに集合だあ! |
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▲お盆の弟 ▲あん ▲海街diary |
「お盆の弟」(107分) | ||
白黒の画面がゆっくり動き出す。何とものんびりした田舎の風景の中に、将来を云い知れず悩んでいる一人の映画監督が登場する。彼は、郷里、群馬県の玉村に、がんの宣告を受けた兄の介助で一時別居のような帰郷をしている。田舎はさすがに人の温かさを感じるが東京に残した娘にも会いたい。「とほほ…」である。とんでもなく可笑しく痛い作品世界を渋川清彦と光石研が、ホンモノの兄弟かと見まがうばかりの演技トーンで見せきる。このお話は脚本家足立紳のこれまたリアルな実体験がベースだとか。だから人物描写の彫り込みが深く大らかで、なおさら物語に引き込まれるのだ。加えて、その物語にすんなり入り込むヒロイン河井青葉の奇跡のような輝き存在感を涙と笑いの中に見てほしい。これはヨコハマ映画祭が映画ファンみなさまに推奨する10年に1本の大傑作なのである。 |
(脚本賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞)
監督=大崎章 脚本=足立紳 撮影監督=猪本雅三 音楽=宇波拓
出演=渋川清彦、光石研、岡田浩暉、河井青葉、渡辺真起子、田中要次
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「あん」(119分) | |
“珠玉作”などという言葉は使い古されており、やや陳腐かも知れぬが、そうとしか言いようのない、心に染みる秀作である。ドリアン助川の同名原作を得て、河瀬直美監督が正にその本領を発揮した本作は、日本社会の差別や偏見をたじろがず見据えた物語の中に、生きることへの真摯な省察、人間に対する深い理解と慈しみが込められ、激しくわれわれの心を打つ。主人公徳江に扮した樹木希林の、これまでキャリアを総結集したような渾身の演技が最高だが、どら焼き屋の店長千太郎に扮し、寡黙に何かをじっと耐えている風情の永瀬正敏の佇まいもまた素晴らしい。市原悦子のみなぎる風格、内田伽羅の溌剌とした若さ、すべてが魅力的な映画だ。これは人間を信じてみようという深い思いに誘われる、河瀬直美監督の最高傑作だ。 |
(主演男優賞、特別大賞) 監督・脚本=河瀬直美 原作=ドリアン助川「あん」 撮影=穐山茂樹 美術=部谷京子 出演=樹木希林、永瀬正敏、内田伽羅、市原悦子、水野美紀、太賀、兼松若人、浅田美代子
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「海街diary」(128分) | |
この作は、世界水準の映画である。小津安二郎の諸作を思わせる鎌倉を舞台に、仲のよい三姉妹の日常にさざ波をもたらす四人目の家族が現れて―。登場人それぞれが抱える心の葛藤を四季折々の風景とともに慈しみ紡ぎ出す。由比ヶ浜の海の散歩、庭に咲く梅の花を眺めるある夜の風景、満開の桜並木を走る自転車の滑走、花火見物の納涼船、サッカー場の躍動感と歓声、みかんを剥きつつ炬燵に寝っころがる心やすさ。どれもこれもが私たちの失くせない大切な日常であり、よりどころであることをこの映画は教えてくれる。まるで現代に小津の珠玉作が生まれ変わったかのように、あたたかく軽やかである。驚くべき演出手腕をこの一作に傾注したのは、あの是枝裕和であり、鎌倉の現在の光を的確に映像化したのは新鋭瀧本幹也である。人間っていいな、家族っていいな、そう思えるのだ。 |
(作品賞、監督賞、撮影賞、主演女優賞、最優秀新人賞)
監督・脚本=是枝裕和 原作=吉田秋生「海街diary」 撮影=瀧本幹也 音楽=菅野よう子
出演=綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず、大竹しのぶ、加瀬亮、堤真一、風吹ジュン、リリー・フランキー、樹木希林
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