第27回ヨコハマ映画祭

 上映作品紹介

 日本映画が熱い!
 また1年が巡り、ハマの冬の風物詩・日本映画の祭典ヨコハマ映画祭の季節がやって参りました。
 2005年の日本映画は豊年満作、その素晴らしい成果と共に、映画祭も熱く燃え上がります。
 祭りのクライマックスは、2005年に最高に輝いた映画人たちが勢揃いする個人賞表彰式。
 井筒和幸監督作品「パッチギ!」がグランプリ・監督賞・撮影賞・最優秀新人賞ふたつの計5冠を獲得しました。
 映画上映は、「パッチギ!」に加え、3冠受賞の緒方明監督作品「いつか読書する日」、2冠に輝く内田けんじ監督作品「運命じゃない人」の3大傑作。
 2月5日は、映画ファンのための「映画の日」。
 映画ファンは全員、横浜・関内ホールに集合!

運命じゃない人     いつか読書する日     パッチギ


「運命じゃない人」98分)
映画には、まだこんな素敵な可能性が残っていたんだ! 数々の若手監督を輩出し続けているPFF(ぴあフィルムフェスティバル)だが、今、最高の才能を世に送り出した。恋に破れた人のいいサラリーマンが、同じような境遇の女性と知り合い、もう一度生きる希望を見出していく。…そんなハートウォーミングな冒頭の展開が、その後、視点を変える毎に次々と物語の様相を変えていき、先読みをする、すれっからしの映画ファンのあらゆる予測を小気味良く裏切っていく。この語り口のうまさは、もう空前絶後・驚天動地。観客は大技のドンデン返しをくう快感に酔い痴れながらも、人生の深さ、苦味に思いを馳せる。天才ウチダの演出力は一糸の乱れもなく、ラストシーンに向かい、映画の楽しさを骨の髄まで満喫させてくれる。主要な5人の役者のアンサンブルも素晴らしく、長く残る余韻に浸りながら、待ち待った超・新人監督の鮮烈デビューに拍手を送ろう。内田けんじ、万歳!

(新人監督賞、審査員特別賞)

監督・脚本=内田けんじ
撮影=井上恵一郎 照明=鳥越正夫 音楽=石橋光晴

出演=中村靖日、霧島れいか、山中聡、眞島秀和、山下規介、板谷由夏

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「いつか読書する日」127分)
朝まだき薄闇の坂道に牛乳配達をするヒロイン(田中裕子)が登場した瞬間に、観客はこの映画が傑作であることを予感する。走るひたいを伝う汗、熱をおびる体の内には30年間誰にも打ち明けることがなかった静かな恋心を秘めて…。前作「独立少年合唱団」からの名コンビ、監督・緒方明、脚本・青木研次が渾身のオリジナルストーリーを圧倒的なリアル感覚の中に紡ぎだしていく。その作劇術はこれまでの日本映画にない人間観照につらぬかれており、感動以上の驚きをもたらしてくれる。だからこそ長い歳月を経ても変わることのなかった大人の恋心があふれだす瞬間が無類の美しさとなり迫ってくるのだ。かなわぬ恋を諦めるのではなく、思う相手と自分の人生を真っ直ぐ見つめてブレることがない役柄を、田中裕子が深く彫琢する。岸部一徳の存在感は芝居であることさえ忘れさせて“神業”の域に到達している。限りなく美しい恋の物語を、本物の映画ファンと共に堪能したい。 (脚本賞、主演女優賞、助演男優賞)

監督=緒方明、原作・脚本=青木研次、撮影=笠松則通 音楽=池辺晋一郎

出演=田中裕子、岸部一徳、仁科亜季子、渡辺美佐子、上田耕一、香川照之
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「パッチギ!」119分)
1968年の京都を舞台に日本と在日朝鮮の高校生が繰り広げるヤンチャで切実な日々を痛快に爽快に描いた青春映画の最高傑作が誕生した。伝説の名曲「イムジン河」の調べにのせて、“日本版ロミオとジュリエット”は“おもろうてやがて悲しき”娯楽の王道をひたすら突き進む。対立するふたつのグループを通じて社会への入口に立つ主人公を塩谷瞬が熱演すれば、運命の美少女を沢尻エリカが匂い立つほど可憐に魅せる。この二人の思いの行く末を誰もが応援せずにはいられない。鴨川の大乱闘をつぶさに見せきるカメラワークの冴えがパンチの痛みを実感させてくれる。普遍的な人間像を描いて並ぶものがない「巨匠」井筒和幸はやはりただ者ではない。「自分の熱い思いを信じてパッチギれ」。若人に期待を寄せるメッセージはどこまでも温かく澄みきっている。井筒監督の集大成にして日本映画の至高の到達点をご堪能いただこう。 作品賞、監督賞、撮影賞、最優秀新人賞2冠)

監督・共同脚本=井筒和幸 脚本=羽原大介 原案=松山猛 撮影=山本英夫 

出演=塩谷瞬、高岡蒼佑、沢尻エリカ、楊原京子、オダギリ ジョー、真木よう子
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LAST UPDATE 2005/12/17